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「おぢいさん、そんなに立つてばかりいないで腰をかけなさいよ」
盛子は時々半ば無意識に呟いた。
稍意地の悪い、きびしい調子であつた。
徳次はいつのまにか腕組みをしていた。あのあてずつぽうな、そゝつかしい、力りきんだ様子が現れていた。
「ふむ、ふむ」
「ふうん」
「それあ、あつさりしていゝですな。こつちでは山車が生憎あいにくこはれて、満足なのは一つしかないんでね。あんまり淋しいからと云ふんで、こんな思ひつきをやらかしたらしいですがね」
と、小谷は目を丸くした。欲しさうだつた。すると、逸早く、
思はず正文は笑ひかけた。それを隠すやうに小首をかたむけてわきを向くと、又房一の話を傾聴する恰好になつた。そして、一度起きなほつた背はだんだんと柔かく前こゞみになつた。
気の毒であるから、風呂はわかさなくともいいぜ、と高橋に云うが、彼も私を気の毒がっているらしく、たいておく。親切はありがたいが、気の毒がられるのも、つらい。思うように仕事ができないと、フロたきの人たちに悪いような気持になるので、かえって負担になることがあった。
「さあ、一つ拝見しませう」
「いや、まだ」
「何だらう、山師を煽おだてて又一儲けしようてんだらう」