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腹に物がつめこまれると、さつきはあんなにへたばつてしまつた神主の一隊もどうにか元気がついたやうであつた。これからいよいよ町通りである。自分の家の前を、妻子や使用人達がずらりと見物している中を、しやちこ張つて、堂々と歩かねばならないのである。で、大半はいつのまにか草履や下駄にはきかへていたものの、まだあの木箱をひきずるがらがらいふ音をたてて、紅い色の滲んだ、紙衣の神官達は、笏を前に構へ、気を張つて真正面を向いたまゝ繰り出して来た。俳優で云へば、まさに花道の出にさしかかつて来たところである。
「さあ、どうぞ。ずつとお通り下さい」
「畜生、弱い奴だ」と、根津は笑った。
「おぢいさん、そんなに立つてばかりいないで腰をかけなさいよ」
「――さうだな」
「なあ、先生」
房一は笑つていた。
「御機嫌だつたね」
「ふむ、毛嫌ひされて、孫ができてからやつとこさ婿養子になつたんだからね。――しかし、今ぢや正当な相続人だから、喜作さんに分けた分も自分の物だといふ理窟なんだね」
「や、さうでしたか。それは――」と、鬼倉は目に見えて和やはらいだ。
「これを御大典のお祝ひ日に着るんですつて」
笹の葉の下から現れたのは頭から尾まで黒々と廻り、全体に円味がつき、所々の鱗が金色に光つていた。
「さう、知つてる、知つてる」